富士川水系 48
山梨県
××年××月××日
なかなか行けなかった山梨県身延から早川周辺の砂金採取です。ホントは女房殿と避暑を兼ねて、2〜3日かけて温泉旅館にでも宿泊し、南アルプスの懐奥深くで金塊の夢を見てみようかなと思っていました。しかし、都合で一人で遠征することになり、旅館に宿泊するのもなんだかつまらないので、昔鳴らした山屋の頃の小道具を倉庫から引っ張り出し、3日間のテント生活を楽しむことになりました。出発2日前には装備、献立の計画を立て、前日には食料その他の買出しです。ああ、なんだか久しぶりだなあ。その昔、登山を夢中でやっていた時の頃を思い出しました。 朝4時過ぎに家を出発。4WD2シーターリアエンジンの我がスーパーカーでハイウェイを飛ばすとなると、荷台の荷物もろとも何処で空中分解してもおかしくない状態なので、一般国道をひた走る。老平の駐車場に到着したのは9時少し前だった。のどかな山村の空気を深呼吸し、身支度を整えて、さて出発しようとしていたところ、どこで見ていたのか地元のオヤジさんが近寄ってきました。「釣り?それとも山登りかい?」と、どこへ行っても聞かれるありきたりのパターンの挨拶から始まった。とっさには「釣りです」とでも答えておいた方が後が早いと思いましたが、別に怪しいことをしているわけでもない(でも、どう見ても怪しく見える)ので正直に答えることにしました。「いえいえ、砂金採りに来たんです。」こういう返事をすると普通なら激しいリアクションで「ええっ?砂金採り?砂金なんか採れるのかい?」といった会話になるはずなんですがが、このオヤジさん「へー、砂金堀かあ、・・・しばらく見てないなあ。昔はこの辺では金堀してたからな。最近やる人はいないから結構採れるかもな。」と、いたって静かに答えてくれました。大昔から金鉱があって、一番最後まで掘っていたのは昭和30年代最初の頃までやっていたということであり、しかもその場所まで教えてくれました。なんだか期待が大きく膨らみ、この話を聞いただけでリッチな気分になってきました。
さて、今日のひと堀りめは林道を20分程歩いたところに流れる支流で、上流には金鉱山もあったといわれる沢を手始めに探ってみることにしました。小さな岩盤がすぐ近くにあったので早速パンニングすると、小粒ながらいくつかの砂金を簡単に採取することができました。しかし、期待していたほど多くもなければ大粒砂金が採れる訳でもありません。まあ、手始めとしては上々ということで次の谷の本流の鉱山跡直下に向かいました。15分程歩くと林道は二股になり、左へ進めば川に近づいて5分で終点になりました。ここが金鉱山の精錬場跡だという話です。川床に降りると岩盤は砂岩と粘板岩から成っていて、黒色の粘板岩のあちこちには、大小の石英脈が走っています。これがすべて含金石英脈だとすると今日の収穫はものすごいことになるだろな。さらに周りを見わたすと、川辺の岸壁には話にあった坑口が意外と小さく開いていました。しゃがんで背中を丸めてやっと入れる程度の入り口です。奥からは冷たい水が湧いていて、中は当然真っ暗で何も見えません。ジーッと見ていると気色の悪いものが見えてきそうなので、それ以上覗くのは止めにしました。ところで砂金の方はどうでしょうか。まずは坑口前の流れでカッチャを一振りしてみました。パンニング皿に土砂を山盛り乗せて、例によって車のハンドルを回すように選鉱して行きます。砂鉄はほとんどありません。仕上げにやさしく水流の渦を作ってやり、お皿の隅に残った比重のの重い砂を飛ばしてやります。出てくるはずだ。が、ありません。山吹色に輝く黄金の粒が最後にお出ましになるはずなのですが・・・有りません。何度やっても出てこないのです。続いて盤たたきの術。砂金が挟まっていそうな岩盤のひび割れをバールでこじり、取り出した細かい砂をパンニングします。砂金がある川なのか無い川なのかを判断するには、通常では一番手っ取りはやい方法です。しかし・・・残らないのです。思わせぶりに、やたらあちこちに走る石英脈はただのまやかしか?それともこの川に不慣れな私の技術の未熟さでしょうか?遂にあきらめて昼飯にしました。木陰は涼しく本当に気持ちが良い。人の気配のまったくない山奥で、澄んだ渓流に足を浸し、黄金に夢を馳せながら握り飯をほうばります。はるか昔の山師達も、きっとこんな風にして夢を追っていたんだろうな。 一日目の砂金の収穫は支流一カ所だけでしたが天気も良く、地元の方に昔の金山の話も聞けたりして、こちらの収穫はおおいにありました。 たっぷり遊んだ後は早川町営「湯島の湯」でゆっくり疲れを流し、今宵の野営所を探しながら、早川をさらに上流へと向いました。
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